ベリルコーヒーblog
23年越しのフィルム ― 映画館の後輩たちと神戸で紡がれる新しい物語
人生は長い映画のようだ。思いがけないシーンで、懐かしい登場人物がスクリーンに戻ってくる。その瞬間に立ち会えたとき、人は時の流れを超える奇跡を実感する。私にとってそれは、23年前に映画館で共に働いた後輩たちと神戸の小さな店で再会したあの日だった。
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23年前の映画館での出会い
23年前、私は映画館でアルバイトをしていた。館内に広がるポップコーンの香り、上映前のざわめき、そして暗転の瞬間に訪れる静寂。どれもが青春の断片であり、仲間との思い出の舞台だった。
当時、私の後輩として一緒に働いていた二人の仲間がいる。売店で慌ただしくドリンクを準備し、館内清掃に汗をかき、終電間際に「今日も大変やったな」と笑い合った。スクリーンの裏側で共に過ごした時間は、ただのアルバイト仲間以上の絆を生み出していた。
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神戸で再会した後輩の店 ― ベリルコーヒーロースタリー
年月が流れ、彼らと連絡を取ることもなくなった。けれど数年前、耳に飛び込んできた知らせが私を驚かせた。
「映画館で一緒だったあの後輩が、神戸でコーヒーロースタリーを始めたらしい。」
その名は「ベリルコーヒーロースタリー」。自家焙煎したスペシャルティコーヒーを一杯ずつ丁寧に淹れる店だと聞き、いても立ってもいられず訪ねてみた。
扉を開けた瞬間、焙煎したての豆の香ばしい香りに包まれた。棚には世界各地の豆が並び、カードには産地や標高、風味の特徴が書かれている。奥では焙煎機が静かに回り、粉が挽かれる音が心地よく響いていた。
カウンターに立っていたのは、かつて映画館で後輩だった彼。少し大人びた表情をしながらも、笑顔はあの頃のままだった。
「おお、先輩!久しぶりですね。」
その声を聞いた瞬間、23年という時間の壁が一気に崩れた。
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再会を象徴する一杯 ― エチオピア・イルガチェフェ
彼が最初にすすめてくれたのは「エチオピア・イルガチェフェ」。カップに注がれた瞬間、花のように華やかな香りが立ちのぼる。ひと口含むと、柑橘を思わせる酸味と透明感ある甘みが広がり、余韻はまるで紅茶のように澄んでいた。
その味わいは、まさに彼を象徴しているようだった。若き日の彼は明るく爽やかで、周囲を照らす存在だった。イルガチェフェの鮮烈な香りは、その姿を思い出させる。年月を重ねた今の彼は落ち着きと深みを備え、その柔らかな甘みと余韻に重なる。
コーヒー豆が産地から長い旅を経て焙煎され、一杯となって人の前に届くように。彼もまた、人生の旅路を歩み、今ここで自分の店を築いている。その一杯は、私にとって「再会の味」だった。
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もう一人の後輩 ― 303works
さらに驚いたのは、店内の一角に並べられた革製品だった。カラフルなキーケースや財布、手に馴染むバッグ。ブランド名は「303works」。手掛けているのは、映画館時代のもう一人の後輩だった。
彼はコーヒーとは別の道を歩み、ものづくりの世界で腕を磨いてきた。その結晶が今、ベリルコーヒーの店内で息づいている。かつて映画館の暗闇で共に働いた二人の後輩が、それぞれの道を進み、今は同じ空間で肩を並べている。その光景を目の当たりにして、胸が熱くなった。
映画館のアルバイトという何気ない出会いが、23年を経て「焙煎所」と「革工房」という形で再び交差し、今は神戸で共に輝いている。人生の不思議さと縁の力を心から実感した。
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結び ― 人生のフィルムはまだ続く
コーヒーを飲みながら、私たちは当時の思い出を語り合った。人気作の封切り日に駆け回ったこと、売店での失敗談、終電後に夢を語り合った夜。笑い声が響き、23年の空白はすぐに埋まった。
「映画館で学んだことが、今の自分を支えてるんです。お客さんと向き合う喜び、人とのつながりの大切さ。あの経験がなければ、この店はなかったと思います。」
オーナーの言葉を聞きながら、私は心の中で拍手を送った。仲間たちがそれぞれの道を選び、そして再び同じ空間に集まったことは、まるで映画のエンドロールの後に流れる特別映像のようだった。
人生というフィルムはまだ続く。イルガチェフェの香りは、新しいシーンの始まりを告げていた。
結び ― 人生のフィルムはまだ続く
コーヒーを飲みながら、私たちは当時の思い出を語り合った。人気作の封切り日に駆け回ったこと、売店での失敗談、終電後に夢を語り合った夜。笑い声が響き、23年の空白はすぐに埋まった。
「映画館で学んだことが、今の自分を支えてるんです。お客さんと向き合う喜び、人とのつながりの大切さ。あの経験がなければ、この店はなかったと思います。」
オーナーの言葉を聞きながら、私は心の中で拍手を送った。仲間たちがそれぞれの道を選び、そして再び同じ空間に集まったことは、まるで映画のエンドロールの後に流れる特別映像のようだった。
人生というフィルムはまだ続く。イルガチェフェの香りは、新しいシーンの始まりを告げていた。
そして私自身もまた、淡路島・岩屋で「Shima Cafe」という新しい挑戦を始めようとしている。神戸で出会った後輩たちの姿は、その歩みを後押ししてくれる大切な灯火になった。