姉の夢を、僕の現実へ
―Shima Cafe 誕生までの記録―
2025年の夏、僕は人生のひとつの転機を迎えた。
会社を辞め、淡路島・岩屋の古い商店街でカフェを開くという、思ってもいなかった道へ踏み出したのだ。
屋号は Shima Cafe(シマカフェ)。
けれどこの店は、もともと僕の夢から始まったものではない。
きっかけは、姉の行動力だった。
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姉が見つけた、偶然の好物件
姉は以前から、シェアハウスや民泊など“人が交わる場所”に強い関心を持っていた。
旅をしながら、人と話しながら、その空気を楽しむ。
「いつか自分も、そんな拠点を持ってみたい」――そう語っていたのを覚えている。
そんな中、淡路島・岩屋の商店街に“飲食店の居抜き物件”が出たという情報が舞い込んできた。
しかも状態が良く、すぐにでもスタートできるほどの優良物件だった。
姉は迷わなかった。
自らの出資ですべてをまかない、スピーディに契約を完了させた。
当初、僕はそれを「すごいなぁ」と少し他人事のように見ていた。
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僕は最初、関わっていなかった
当初、僕はこのプロジェクトに関与していなかった。
資金援助もしていなかったし、口出しもしていなかった。
それは完全に、姉の計画であり、姉の夢の延長線だった。
けれど、時間が経つにつれて事情が変わっていく。
準備が本格化する中で、姉の体調や生活との両立が難しくなり、プロジェクトは徐々に停滞していった。
「このままでは、せっかくの物件も活かされないかもしれない」
そう感じた僕は、黙っていられなくなった。
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兄にだけ相談した
姉と直接話すことはなかった。
家族といえども、踏み込みすぎるのは違う気がした。
だから、まずは兄に相談した。
自分の気持ち、この物件への可能性、そして“今後の生き方”について。
兄は落ち着いた口調でこう言った。
「やりたい気持ちがあるなら、ちゃんと自分で責任を持って引き継げばいい」
その一言に背中を押され、僕は心を決めた。
姉が築きかけたものを引き継ぎ、自分の責任でこの場所を開くことを決意した。
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Shima Cafe ― 僕自身のスタート
屋号を変えるか悩んだが、姉の“島日和(しまびより)”の雰囲気は大切にしたかった。
そこで、英語表記にして**「Shima Cafe」**とした。
ロゴも一新。
レトロなフォントに4本のカラフルなライン。
そこに**「Since 2025」**と加えたのは、僕がオーナーとして一歩を踏み出した証だ。
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退職、そして独立へ
2025年8月末、僕は勤めていた会社を正式に退職する。
その決断は簡単ではなかった。
でも、“決まったレール”から外れたからこそ見えてきたものがある。
「自分の時間、自分の価値観で生きていける場所」
それが、このSHIMA Cafeであり、僕にとっての“生き直し”の場所になろうとしている。
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まだ小さな店。でも、誇れる挑戦
準備はまだまだ山積み。
初めての飲食、仕入れ、人とのやりとり、機材、法的手続き…。
でもそのどれもが、**「自分が本当にやっているんだ」**という実感をくれる。
大きな成功を望んでいるわけじゃない。
ただ、誰かがふらっと立ち寄れて、ちょっと心がほぐれる場所をつくりたい。
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最後に
姉が偶然出会った物件。
姉がすべて費用を出して始めたプロジェクト。
そこに僕の想いが重なり、兄の後押しもあって、今、Shima Cafeは誕生しようとしている。
話し合いはなかった。
けれど、流れとタイミングが自然と僕をこの場所へと導いてくれた気がする。
人生には、時として“誰かの夢の途中”を引き継いで、新たな物語を始めるチャンスがある。
僕にとって、Shima Cafeがその場所だ。